66という数字が持つ意味について
2016年11月11日
66%プロデューサーTakaです。今回、スピンギア発のヨーヨーブランドを立ち上げるにあたり、そのブランドを初めるに至った経緯を説明させていただければと思います。ヨーヨーマスターとして活動し、ヨーヨーの普及に努めてきましたが、自分のブランドを持つ、ということは格別の意味があり、また商業的にマーケティングの結果、売れるブランドを作ろうというコンセプトとは違うところで始まっている企画なので、個人のバックグラウンドを含め、66%がどのようなブランドを目指して始まっていくのかのストーリーをお伝えさせていただければと思います。
ヨーヨーブランドにとってはプロダクトがすべてで、このような個人的なストーリーは要らないという流れもあるとは思いますが、そこは私Takaが仕掛けるブランドなので、おつきあいいただければと思います。
1)66%の意味
1998年冬、いわゆるフルサイズのヨーヨーに対して、小さなヨーヨーの一番使いやすい限界サイズが38mm前後であることを発見しました。
実用限界最小直径38mmの法則
フルサイズのヨーヨーでも1mm単位の違いがフィーリングに大きな影響を与えますが、小さいサイズのヨーヨーになると1mmという数字の持つ意味が大きくなり、比率で1mmの割合が高いというだけではなく、飛躍的にヨーヨーのパフォーマンスに影響を与える回転力の差として出てきます。
ミニヨーヨー試作品(1998年) 左から36mm、38mm(製品版)、40mm
これはトミーから発売されたスクリューボールミニのデザインに関わった時に、発見した数字で、36mmだと物足りなく、40mmだとやりやすいけど、ミニと言うよりは小さいヨーヨーと言った感じでした。2mm刻みでプロトタイプを複数用意した中からピックアップした結果、38mmのものだとストリングトリックはもちろん、ダブルループ、ドッグバイト、ホームランを含む当時のハイパー30トリックを全部できることがわかりました。ミニヨーヨーを作る時の一つの基準が技術さえあれば1/1と同じことができる、というコダワリでデザインしました。いち大学生の立場で関わっていたのでそれをどこかで発表したりすることなく、いままで胸に秘めた小さなヨーヨーの法則として持ち続けていました。
当時ヨーヨーブームにも助けられ、国内外で十数万個の販売実績のあったスクリューボールミニはその後、金型が流用され、ガンビーのヨーヨーとなって、当時のソニープラザで売られたり、火力少年王のラインナップに採用されたりと発売から数年経ってもミニヨーヨーの世界に影響を残しました。ヨーヨーのプロになったかならないかの段階でヨーヨーデザインに関わることができ、デザイナーとしてのキャリアもスタートすることができたのですが、最初のヨーヨーが小さなヨーヨーだったというのは一つの運命だと思っています。
直径39mmのタラスクスは法則を利用して、いつかやりたいと思っていたフルサイズに対してのミニチュアヨーヨーという夢を木村氏との会話の中から生まれた規格として世の中に登場しています。
またマイティーフリーも同様で、ブッダキングを作っていく過程で、ヨーヨーファクトリーからも小さなヨーヨーが欲しいという話をし、プロトタイプのテストから関わり、直径とギャップの関係から細い紐のほうがプレイアビリティが向上することを発見し、スリック4に相当するマイティフリーストリングの提案を行ってきました。
自分のヨーヨーキャリアの中でも小さなヨーヨーというのは特別な想いがあり、特にこだわって集めてきた分野でもあります。
いつか小さなヨーヨーを本気で作ってみたいと思いながらその思いは日常生活のやるべきことの中に埋もれていきました。ある出会いがあるまでは。
その出会いについては次回のトピックで触れていければと思います。
今回、”小さな”ヨーヨーブランドを立ち上げスタートをきるにあたり、アンダーサイズでもなく、ミニサイズでもない新しい規格を提案できればと思い数字について色々考えていました。
その中でいくつか候補がありました。
- 2/3計画 38mmがフルサイズに対して約2/3なのでどうだろうか。 これはドールの世界にこのコンセプトの考え方がありそれを模した形になります。
- Yゲージ 新しいミニチュアヨーヨーの規格化を目指して基準を設定。インスピレーションは鉄道模型のNゲージやHOゲージから来ています。
- 66% 2/3を思いついたあとに、66%という数字がひらめきました。
すでに先行する模型やドールの世界からパロディ的にブランド名を決めるとバックグラウンドがない人たちからすると意味がわからなくなるので、わかりやすさと66という数字の持ついくつかの意味からブランド名を66%にしました。どちらにしろサブカルチャーの要素を踏まえた味付け、コンセプトのブランドにはなっていくと思います。
66%はアンダーサイズでもなく、ミニサイズでもない新しい規格です。
各社から色々なサイズの小さなヨーヨーが出ていますが、スピンギアは66%というブランドを通し、新しいヨーヨーのサイズ規格として提案し、66%というカテゴリーを創造していきたいと考えています。
2)コレクションアイテムとしてのヨーヨーの楽しみ方の提案
過去から今までたくさんのヨーヨーが作られてきました。ヨーヨーを20年近くやっている人は500個くらいは平気で家にあり、ヨーヨーをそんなに持ってないよ、という人でも100個くらいのヨーヨーは当たり前のように持っているかと思います。
近年はバイメタルがトレンドになりより”使いやすい”、”戦える”ヨーヨーに注目が集まっています。
いちヨーヨーファンとして、ヨーヨーコレクターとしては使いやすいヨーヨーというのも悪くないのですが、いくつか到達点に達してしまっているヨーヨーに触れるとそこから先、ヨーヨーを集めたり、形や種類の違いを楽しもうという感覚があまり無くなってくると思っています。ヨーヨーのデザインが集約化してきて奇抜な発想やコンセプトが中々受けいられないため発売されにくい環境になってきたというのもあると思います。
ヨーヨーは道具なので競技性としての使いやすさを追求することで発展してきた文化でもあります。それはとても正しい流れでこれからもその流れは変わらないと思います。
ただ、道具としてだけではなく、趣味嗜好品として”集める”という文化も大切なヨーヨーの楽しみ方であると考えています。
自分の運転している車のミニチュアサイズを並べるように、自分の好きなヨーヨーの66%サイズのヨーヨーを集めて、遊んでもらいたいという新しいヨーヨーの楽しみ方を提案することが66%ブランドを立ち上げたきっかけの一つです。
そのために、スピンギアでオリジナルの小さいヨーヨーを作るということではなく、このブランドの企画/規格を始めるにあたり、欠かせないのはブランドとのコラボレーションをすることです。
オリジナルヨーヨーのブランドになり、ブランドと競争関係になるのではなく、ショップという枠を保ちつつ、市場を拡大し、現行のヨーヨーブランドと共創関係になり、お互いがプロモーションをしあう関係にしていきたいという企業戦略の一環でもあります。
難しいことはさておき、子供の頃からNゲージやチョロQが好きで集めていたり、大人になってもガジェット系にハマっていた自分の小さいもの好き、ミニチュア好きという思いをヨーヨーの世界でも展開してみたいというのが動機でもあります。
棚の上にヨーヨーをたくさん並べても66%なら幅をあまり取りません。スマホサイズのヨーヨーバッグにヨーヨーが6個入ってしまうこの楽しさを皆さんにも味わって欲しいと思っています。
3)いつでもどこでも スピンガジェットというコンセプト
ヨーヨーの魅力の一つがポケットに入り、どこでも持ち運べることですがさらに小さいことでいつでもどこにでも持っていって、ヨーヨーをして遊べるという新しい感覚も提案できればと思いました。小さいながらきちんと使える(実用限界最小サイズ)というのはミニヨーがおもちゃの域を出ず、キーホルダーレベルかもしくはアンダーサイズのアンダーサイズと言った感じの40mmオーバー(使いやすさでは優位性があり、ヨーヨーとしても問題はありません。ただポケットに限らずあらゆるところに入れて持ち運びながらという考えでは少し手に余ります)。しかなかった状況からすると中間のほどよいサイズ感を掘り起こせたと考えています。
ガジェットしての魅力をヨーヨーにも付加するために、小さなメタルの重量感と遊んだときの満足感を両立させる必要がありました。工場の職人の方と設計のやり取りの中でこだわっていった部分もそこにあります。
スピンガジェットというネーミングはヨーヨージャムからスピンギアのオリジナルヨーヨーとして発売する予定で進めていたPOM版のパトリオット(後にキックサイドになった機種)で考えた愛着のある名前でもあります。
スピンガジェット(SG)は回転に魅せられた人たちに贈りたいアイテムです。
4)究極のヨーヨーとは?
ヨーヨーに出会い、ヨーヨーショップを立ち上げ、ヨーヨーを広める活動をしてきた中で、ヨーヨーを作らないのですか?という質問をよくされてきました。
ヨーヨーは常に発展し、進化し続けています。変化のスピードに差はあるものの、その流れは変わりません。現時点で究極、というものを作り上げても発売をした瞬間からその劣化ははじまり、いつかは追い抜かれる運命にあります。
ヨーヨープレイヤーとして自分の理想を詰め込んだ最強の、究極ヨーヨーというものをいつか作りたいという気持ちがないわけではありません。4Aのヨーヨーに関しては色々なチャレンジをして来ましたが、まだ自分の中の理想にたどり着けてはいません。
約20年のキャリアの中ではヨーヨーを幾つかデザインする機会もあり、自分の考えていたことが形になるのは嬉しいですが、自分の中でメイン部門ではない1Aのオリジナルのヨーヨーを作り、それで勝負をしたいというのは制作に関しては”傍観者”、”集める側”としてヨーヨーを楽しみたいという自分の気持からすると少し違っていました。そのような中でコラボレーションをメインに、各メーカーのフラッグシップモデルのミニチュアを発表していくというコンセプトは自分の中の究極のヨーヨーメニュー作りとも言える一生をかけてやってみたい一つの企画として持ち上がってきました。
どれか一つに決めるのは難しいけれどマスターピースコレクションとして、歴史に名を残すべきヨーヨーたちをミニチュアモデルの形で残していく、という企画は自分がまさにやりたいことにぴったりでした。
5)66という数字とヨーヨーコミュニティー
ヨーヨーの世界でヨーヨーを連想させる数字といえば44があります。よんよん、の語呂合わせから日本ではヨーヨーの日として制定されてます。近年では44クラッシュの功績で海外のプレイヤーたちにも44という数字がヨーヨーを連想させる数字として受けいれられ、44rpmなどのブランドも生まれています。
アメリカではヨーヨーの日は6月6日に制定されています。ダンカンの創業者の誕生日にちなんでとのことです。また66はずっと見てるとヨーヨーに見えてくる気がしませんか?ダブルウォーク・ザ・ドッグ!!
66という数字が持つ意味や魅力がもっと多くの方に伝わって、66がもっとヨーヨーの世界で広まればという思いもあります。
6)気楽に行きましょう
120%のちからでヨーヨーを振り続け、大会で戦うことも楽しみの一つですが、楽しいヨーヨーとして66%くらいの力で緩やかに遊ぶ、そんな気持ちも込めています。緩急つけていくことも大切かと。
前置きが長くなりましたが66percentの最初のコラボモデル、バラクーダを紹介させていただきます。
66%というブランドを立ち上げるにあたって、ダンカンというブランドとコラボーレーションをすることはブランドのコンセプトにとって必須事項でした。
また世界大会の時にプレゼンを行い、コンセプトを気に入ってもらい、他のブランドとする前にまずダンカンで出そう、と担当に言ってもらえたこともモチベーションの一つになりました。
現役機種の中でダンカンを象徴する機種ということで、多くの世界チャンピオンに愛用され、2016年にバージョンアップしたバラクーダを66%の最初の機種に選ぶことは必然でした。