PYRO66開発秘話〜カラー選択について

PYRO66はオリジナルにないバイメタルという要素を入れたのでカラーの選択についても本体カラーに加えてリムカラーという選択が必要でした。

ここで当時発売されたPYROのカラーを振り返ってみます。PYROLightとプロトタイプを除くとPYROとしては9種類が発売されていました。(PYRO各色はこちらから見れます)

すでに活動を休止しているブランドなので当時なかったカラーを発売しても今後生産される可能性が無く、また、当時の思い入れのないカラーを作るのはPYRO66の方向性としてはちょっと違うと思い、当時存在しないカラー(ハーフカラーの組み合わせも含めて)は検討することはしませんでした。赤に加え、当時発売されたカラーの中から特に手に入れにくかった黒(当時40個生産)と10周年記念モデルの金メッキ(当時89個生産)を選択しました。

また赤についても赤は初期モデルと後期モデルで色味が異なり、初期モデルは赤と濃い赤のハーフカラー、後期は赤とオレンジという2種類が存在していました。オールドスクールなプレイヤーにとってはパイロのイメージは赤x濃い赤、だろうと社内では一致していました。(赤xオレンジは存在していたのですが、パイロのメインイメージではなく、少し違和感を感じます)

ただハーフカラーに関しては大人の事情が発生してしてしまいます。66%シリーズは国内生産で精度も高い工場で作っていますが直径の大きさに対して回転力が強すぎるため普通に組んだだけでは多くの場合、ブレが発生してしまいます。なので小さいモデルでありながらフルサイズの組立工程と同じ用に、ボディーを総当りで組み替えてマッチングをして、ブレのないもしくは少ない個体を作り出す選別作業が必要になってきます。

そのときにハーフカラーにしてしまうと同じ赤100個を作った場合でも、赤と濃い赤のハーフだと使える組み合わせが半分になってしまいます。本来は赤と濃い赤のハーフで行きたいのですが、組み合わせの可能性を高めて歩留まりを良くするために(Bグレードの数を減らす)、両面同じロゴ、同じ色を採用しました。100個づつ2色のボディーを組み合わせるよりも1色200個のボディーを組み合わせたほうが確率が上がるということです。

こだわりとしてこだわらないといけない部分と省く部分は取捨選択をしていくのがもの作りの中の工程の一つですが、色選びに関してはこの様になりました。やりたいこととできることの中から最適解を導き出していく作業となります。

真鍮のリムは黒、金メッキ、シルバーなどができます。バイメタル化をしましたが、モノメタルであった本来のイメージを引き継ぐためにリムと同系色にできる黒と金は、黒x黒、金x金となりました。赤に関してはそもそも赤いメッキがないのが今回のバイメタル化の発端なのでリムの色は赤に合う色、ということで金を選択(完全に趣味です)、またCGでイメージを作ったときに赤x黒の組み合わせもかっこいいということで赤ボディ、黒リムも少量生産しました。CGで組み合わせのカラーが先に確認できるのはすごく便利になりました。

イメージCG。事前に確認できるいい時代になりました。

カラーに関してChris氏側と確認を取り、Goサインを貰い次の段階に進みます。

あとはミツミ製作所さんに頑張ってもらい、製品を仕上げていく過程。そろはむサイドの準備としてはあとは次はパッケージ!

色選択に関しては人それぞれの思い入れがあってどれが正解か、というのは無いと思います。今回の選択も限られた条件の中から選んだ色です。自分のブランドではなく、多くの人の思い入れのあるブランドとのコラボレーションはいろいろな可能性があって、裁量がある部分は、企画者に許された楽しみでもあり、プレッシャーになる部分でもあります。皆さんのHSPINやPYROへの思い入れ、ぜひツイッターなどでハッシュタグ#pyro66 をつけてつぶやいていただければ嬉しく思います。

実物の写真は追って公開します。先にCGを出したのは通常だとCGのほうがよく見えることがあるんですが今回のパイロ、存在感と色の組み合わせ、66%史上最高の”見た目”の仕上がりをしている自信があるのでお楽しみという形にしました。エッジビヨンドの”66%史上、最高のパフォーマンス”を作ったあとにさらに”いいもの”を作るのはハードルが高いのですが、当初の目論見通り、コレクションモデルとして一番大切な見た目の良さを作り出せた(と思える)のは企画者としてはホッとしました。

今回はあえて文章を削ぎ落とさず記録をたどりながら開発のすべてを書き留めています。ものを作っていく上でありとあらゆることに葛藤と意味とコンセプトがあることを感じ取ってもらえればと思います。レベルの高いフリースタイルをする人もわざと構成以外にも、服装も立ち振舞、曲の選び方、普段の過ごし方すべてに意識が通ってると思います。もの作りを通して語らずに意識を感じてもらえるのが理想ですが、HSPINというブランド自体知らない人が増えているのと66%の”セオリー”に反したことが多々あるので自分たちでも後でなんでこのときこの選択をしたか忘れないための記録的な意味でも書き残そうと思いました。それくらいHSPINは思い入れがある大切なブランドです。

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