66STEP1 開発秘話ーステップ1発売の経緯

まもなく66ステップ1 が発売です。

66STEP1の開発ストーリーに行く前にステップ1そのものの開発ストーリーも触れられればと思います。スピンギアがいちヨーヨーショップという立場からものつくりを主体とするメーカーへと変貌していくステップの踏み出すきっかけにもなった株式会社そろはむにとっても大切なヨーヨーです。

2015年のヨーヨーの世界大会が決まった時に、秋葉原でスピンギアを始めてからのビジョンの一つが達成できるという喜びとそれと共に、今後、スピンギアとしてヨーヨーコミュニティーに対して、何をしていきたいかという自問自答がありました。当時のスピンギアはコアユーザーをメインターゲットに、競技モデルとして各メーカーが競って開発しているヨーヨーを紹介し、その楽しさを広めていく活動をメインに据えていました。

どこでも手に入るヨーヨーを。

競技シーンが盛り上がる一方でヨーヨーをこれから始めてみたいという人たちがかなりの数いて、そのうちのほとんどの、特に子供は(当時は)ネット通販で物を買うことが難しく、ヨーヨーをより多くの人に知ってもらいたいという活動をしていくのであれば全国どこの店舗でも手に入る環境を作らないといけない、とヨーヨー普及の次の段階が見えてきました。ハイパーヨーヨーブームとその間の氷河期をどうやって生き残っていくかを模索していくコミュニティーと業界を立ち上げていく内向きのフェーズは終了し、世の中に向けて使命を持った一企業としてヨーヨーをどうやって社会に伝えていくかという課題が見えてきました。

ハイパーヨーヨー第一期ブームをユーザーとして、外から体感し、第二期で中の人、第三期はメーカーの中の人とショップ(売り手)として関わってきた自分にしかできないこと、を考えた時、いつでも気軽に手に入るヨーヨーを安定して作り流通し続けることを使命としました。作るだけでも成り立たないし、流通させるだけでも成り立ちません。安定して手に入るヨーヨーを常に手に入る環境に流し続けることが大切です。

最初に手に入れるヨーヨーとして迷いのない名前としてステップ1、を採用しました。ホップステップジャンプのようにステップシリーズとして展開し、ヨーヨーを段階的にステップアップしていく商品ラインナップをステップ1の発売時には想定していてMy First Yoシリーズとして設定しました。シリーズ化していないですが市場のニーズに応える形でホップにあたる部分としてはワンコインプライスのスリースターが登場しています。

商品を流通にのせる、全国で展開する、しかもブームではない時期で市場にはハイパーヨーヨーも溢れている状況でヨーヨーを開発、発売。

奇しくも第三期ハイパーヨーヨーのプロモーションの最中、玩具店に行けばヨーヨーがあるという状況。かといってヨーヨーが品薄になる程売れていたわけではなく、このタイミングでオリジナル商品を出しても果たして通じるのか、という怖さもありましたがヨーヨーショップという枠を超えて”メーカー”としてスピンギアを成り立たせていくためのきっかけとしてステップ1の製造を決めメーカーならばと勢いで世界大会のプロモーションも兼ねて東京おもちゃショーへ”ヨーヨーショップスピンギア”として出店を果たします。

https://taka-yoyo.tumblr.com/post/121738077917/set-up-for-tokyo-toy-fair-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%81%8A%E3%82%82%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC

スピンギアのおもちゃショー初出店。ヨーヨーのラインナップはステップ1のみオリジナルでそれ以外はダンカンやヨメガなどの輸入製品を取り扱っていました。けん玉の紹介も併せていて、メーカーというよりは輸入玩具会社のブースという様なラインナップ。1998年のヨーヨーブーム真っ只中、ターミネーターオフィシャルインストラクターとしておもちゃショーブースに立ち、第二期ハイパーヨーヨー、ラングスジャパンブースと出演側としては度々、出てきましたが自分で出展側として出ていくの初めてでした。以来毎年おもちゃショーの出店は継続しています。2024年も出店予定です。

発売した初年度から全国に行き渡るということはできませんでしたが安定供給される低価格のヨーヨーが玩具市場にデビューしたことはその後のヨーヨー普及に大きな意味を持ちました。またその年のけん玉ブームや2017年のハンドスピナーブームでそろはむの商品が、全国に流通が広がったことで”次の商品”としてヨーヨーが採用され結果が出て定番化していく流れができました。

ヨーヨーショップスピンギアという名前なのにけん玉やハンドスピナーに力を入れてこまの世界大会を主催しているのも実はすべてヨーヨーが広がっていく流れに還元されています。

990円という価格

ステップ1のもう一つの大切なコンセプトが価格です。ワンコインヨーヨーができればベストですが、品質を求めてのワンコインが成り立たない以上税込990円というのは当時の競技ヨーヨー市場にはないキラープライスで流通の人たちの反応を引き出す上でも大切な価格でした。

ステップ1には初期ロット、オリジナル金型になってからの前期ロット、後期ロットとバリエーション違いが存在します。(右が初期、左が前期ロット)

一番最初に発売されたステップ1はOEMモデルで中国のヨーヨーメーカーのヨーヨーにオリジナルのロゴを乗せただけのものでした。メーカーとして成り立つかわからない中、オリジナルの金型を起こしてリスクを取るというチャレンジはできず、低価格で、最低限の品質を、ということで作りました。

初期ステップ1の射出直後の状態。元のモデルでは使われていたであろうステップ1では使用されていない謎のプラスティックスペーサーもついています。またヨーヨーの淵にランナーパーツ切り離しの跡が大きく残る金型形状です。この傷が品質の面でオリジナル金型に移行する一つのきっかけにもなりました。

中国のヨーヨーにありがちなキャップ裏にある謎の突起。ヨメガブレインのクラッチを抑えるための突起でヨメガ自体がレイダーやファイヤーボールにブレインの金型を流用していたため、ヨメガの模倣をした多くのヨーヨーでもそのまま採用されていました。またヨメガ準拠の形状だったので48mmのキャップよりやや小さめでいまのステップ1やルーピングスターのシリーズとは互換性がありません。

金型代が発生していないため低価格でも発売できることがスタートの段階では重要なファクターでした。

最初の工場には今でも感謝しています。ただ、品質管理基準が中国国内市場向けのレベルだったため、日本国内で売るには色々問題も出てきてしまい、全て国内で検品をするという別のコストが出てきました。

ステップ1が多くの店舗、流通に受け入れられ可能性が見えたのでQCのできる海外基準に対応した工場で、新規に金型を起こし、自分達でデザインをするという道へ進みます。

多くの人に知ってもらっているルーピングスターにもつながっている直径48mmキャップのステップ1シリーズはここからスタートしています。

低価格を維持するために

金型代が発生してしまうことにくわえ自社のオリジナル商品として末長く展開していくために990円という価格をどうやって維持するかが問題となってきます。

ヨーヨーを初心者向けに作っていく上でベアリングの回転は必要だろうと考えていて、当時ファイヤーボールの特許はまだ生きていたのでトランスアクセルを使うという選択肢も無し。

売り場で目立つようにブリスターのパッケージも必須。商品も大切だけどパッケージが一番。これは中国でのスピントップのプロモーション時に学んだことでもあります。

ではどこでコストを圧縮するか。玩具のプラスティックとしては一般的だけど競技ヨーヨーの世界では透明度が落ちる、やや脆いなどの理由であまり使われてなかったABSというプラスティックを採用し、商品化に至ります。

結果、おもちゃ感のある競技用とは別の柔らかい感じのヨーヨーが出来上がり、赤と青という玩具の定番カラーであったこともあり、全国へとステップ1が広がっていきます。

一番のこだわり

売るために必要な要件(ニーズ)を満たすことは自分が良いと思ってるものを他の人に理解してもらうための最低要件。ただそれだけであればスピンギアが手がける意味がありません。

最初に手にしたヨーヨーが使いにくかったり楽しくなかったらそのヨーヨーのせいでヨーヨーを始めようとしている人たちが減ってしまう。ヨーヨーを広めようとしていてお店に並んでも楽しくないヨーヨーは意味がない。流通サイドは全く気にしない要因ですがメーカーとして気持ちを込めた部分はループもできてストリングトリックもある程度できる戻り。使ってて楽しいヨーヨーで最初の1つめ、あとはヨーヨーの楽しさにハマって競技モデルの世界へ来てほしいという部分を形に落とし込み新生ステップ1が誕生します。

次回は66STEP1の開発秘話