前回Step1発売秘話より続き 66Step1の製品情報はこちら
スピンギアのオリジナルモデルで66シリーズをするならステップ1は外せない。
66yoyo初のルーピングモデル。1Aのモデルを66%に落とし込む知見は十分に得てましたが、ルーピングモデルをどうやってこのサイズに落とし込むか。そもそもまともにループができるミニサイズヨーヨーは奇しくも私が開発に関わったトミーのスクリューボールミニ以来、市場に登場していない?(見落としがあったらすみません)
直径に関しては38mmという最適解が20年以上前に出ています。詳しくはこちらの記事もご覧ください
では、重量は?素材は?ストリングは?
いままでの66%シリーズのノウハウが全く使えない可能性が出てきました。ただ66%シリーズとしては開発していないですが、SpinXで引き戻しでリジェネもできるヨーヨーの開発は成功しています。連続したループザループではないですが切り替えしてリジェネしやすいフィーリングを生み出すことには成功していました。
その時にベアリングサイズやギャップの適正値、ストリングの正しい太さもある程度見つけていました。
ただSpnXは真鍮製。真鍮の比重は66%サイズのヨーヨーを作るのにちょうど良いのですが、カラーに制約があり、今回のようにステップ1を作るのであれば赤と青は絶対外せません。そうなるとアルミニウムで本体を作らないといけなくなります。
PYROのときに直径38mmのモノメタルアルミニウムヨーヨーはまともに使えるものが作れないという結論が出ていました。
またキャップに関してもメタルで作るべきか、プラスティックで作るべきかという問題もありました。
アルミボディーで薄型にすると重量が確保できない問題が出てきます。またルーピングに適したギャップや重量配分も未知数。
ならば試作のパターンを作ってとにかく試すしかない、ということでボディ3種xキャップ2種xギャップ2種を製作し最適な組み合わせを探すことに。
理想的な本体形状と重さ?
片面19.7g 組んだ状態で40.5g
一番重いパターン。ほぼ肉抜きなしのアルミニウムの塊。重すぎかなという判断。中ぐりして重量配分を調整しないとループ軌道が安定しにくい可能性があることも露見。仮にメタルの塊として作っても容積的に50gを超えるのは難しそう。ループ形状のアルミニウムの時点でわかっていたことですが、1Aで培った重量感が破れ去った瞬間でした。
片面18.06g 組んだ状態で37.2g
中間くらい?リムウエイト効果もあるので軌道も安定するし、スリープもそこそこ
片面15.8g 組んだ状態で32.7g
リムは残しつつ、軸周りのボディを薄くしました。とにかく軽い最軽量バージョン。これはこれで良さがある感じ。キャップとの組み合わせ次第?ただ軽すぎてループの安定感には欠ける、、、
1Aヨーヨーであればある程度重さの調整だけでなんとかなったのですが重すぎても軽すぎてもループが安定するか、反転しやすいかという今までにない重量配分の問題が見つかりました。プラスティックの2A開発では直面し得ないメタルによる試作ならではの問題でした。いま主流のプラスティックボディ+ある程度重さのあるキャップのスタイルがループのやりやすさに影響し、2Aのスタイルを築いてきたとヨーヨーの試作を通じて感じることができました。
キャップの最適解とは?
3.47g
重めキャップ
2.44g
軽めキャップ
ルーピングヨーヨーにおけるキャップの役割は見た目やキャッチした時に蓋がある方が安心感があるというだけではなく、ループ軌道を安定させる上での重量配分という大切な役割もあります。別のスタイルですが、ある程度重さのあるキャップがフィーリングに大きな影響を与えるのは5Aのスタイルでも発見されています。
今回、プラスティックキャップを作るという選択肢もあったのですがどちらにしろ削り出しでコストは本体と同じくらいかかる上にプラの場合は軽量なことに加え、有効な固定方法が接着となってしまいました。せっかくステップ1として出すのであればキャップ組み替え遊びもしたい、ということで写真で見えるかわからないのですが、キャップ自体にM4のネジを切ったことで本体を繋ぐネジとは別にキャップも同じネジ穴で固定するという方式を取りました。圧入や接着ではないのでレンチで簡単に外せるし、きちんと締めておけばプレイ中に外れることもほとんどありません。
中心の*はレンチ用の穴です。これも削り出しで作られている完全オリジナルパーツ(キャップ一体型なので当たり前ですが)
実は一番厄介。最適ギャップ?
このボディxキャップの組み合わせパターンに加え、試作の課題としては、ギャップの調整があったのですがSpinXから想定していたやや狭めのギャップ指定が仇となってしまい、狭すぎてループがしにくい2種類のギャップしか見つからず、試作としては厳しい結果になりました。
仕上がりの美しさはさすが。可能性しか感じない。試作でベストのスペックは見つからなかったけど、このプロジェクトを頓挫させるわけにもいかないし再度の試作費用は価格にも影響してしまう、、
ここでいままでのミニヨーヨー開発の知見を総動員、”感覚”となってしまいますが最終的な重量配分とギャップを指定し、試作とは違うものが最終製品仕様になるというやや賭けに近い、でもある程度確信のあるスペック調整を行いました。
最終スペック
製品版キャップの重量は全体を厚くして、片面3gとよりループの反転軌道が安定することを狙い重量調整されました。
結果、仕上がりは全く問題なく、また専用ストリングとも相性が良くきちんとループができる楽しい66STEP1が出来上がりました。
フルメタルボディxフルメタルキャップは素材の金額の差は若干ありますがコストの多くを占める切削工程としてはヨーヨー2つを制作するコストと大差なく、モノメタルですがバイメタルと変わらない値段となりました。妥協なく作りたいものを作る 66percentブランドだからこそこだわっていきたい部分です。
ヨーヨーは見た目も大事
もう一つの楽しさにロゴ表現があります。オリジナルのステップ1は水圧転写でフルカラーロゴでした。メタルヨーヨーのロゴの定番といえばレーザー刻印ですが、ステップ1でそれをやっても響かない(というか自分の気持ちが乗らない)のでいつもスピンガジェットやルーピングスターの印刷でお世話になっている八王子の印刷所に相談、メタルキャップへの印字テストをしてもらい採用へとつながりました。しっかりとくっついているので指で擦ったくらいでは剥がれず耐久性のあるプリントになっています。
こうして66STEP1は完成しました。